奥深きクランク芯出しの世界

ハーレーのエンジンの腰下の要的作業と言われる、クランクの芯出しやバランス取り。
当店でもこの事については常に追求し続けている課題の一つですが、落とし穴がいくつもあるので、そのうちの一つを紹介いたします。
一般的には右に付いてるダイヤルゲージを使用しますが・・・・・

左>3/1000mm 右>0/1000mmに25分ほどで追い込みました。
これを見る限り左の方が振れが多く見えますが・・・・

そのまま、右のゲージをピックゲージに換えると、、、0mmだったはずが2/100mmまで増えております。(ピンボケで申し訳ございません)
一般的に使われているダイヤルゲージでは上下の往復運動はキチンととらえますが、回転方向はある程度しか正確に追従出来ていないのがお解かりいただけたでしょうか?
さらに

今度は測る位置を外側にもってくると、1/100mmまで減りました。
これは外側で支持しているので、内側に行くほど振れが大きくなり、外に行くほど振れが小さくなる為です。
これらの事から、芯出しの計測はピックゲージを使って、なるべく内側で計測する事がより正確に測れるという事が解かって貰えたでしょうか?
さらに言えば、外側支持と別の方法での計測もやればより完璧です。
芯出しする前の下準備も大事だし、芯出し正確にしてもマニュアルどおりの手順でやれば(※多くのショップがそうだと思いますが)、せっかく出した芯が狂う可能性が何度もあるので、その辺も独自の方法でやっています。
一般的なユーザーは、バイク屋なら修理出来て当たり前、お医者さんなら治療出来て当たり前。と思っておられる方が多くおられるようですが、同じバイク屋でも、エンジンが得意な店、そこそこ適当にやっている店。そのなかでも徹底的に追及している店、追及しているつもりなだけの店と、イロイロあるのをどうぞ知っておいて下さい。
どれに優劣を付けるナンセンスな意見は私は言いませんが。(常に自分の考えが一番という思考は横に置いておくべきだと思っておりますので)
ハーレーのマニュアルは残念ながら戦前とあまり変わっておりません。今は2010年なんです。
ハーレーの部品は精度が悪い物も多くあります。
正確に数字で追い込んでも、完璧と言えない事が数多くあります。なんとも奥が深くまだまだ出口は見えそうにありませんが、常に神経を尖らせつつも、やわらかい発想力を養っていきたいと思います。
もっと自社オリジナルの特殊工具が沢山欲しいのですが、なかなか作るマニーが捻出できないのでボチボチやっていきます。
今回も同業者や相当なマニアしか理解しにくい内容で申し訳ありません。ペコリ。

Help me!!

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誰か助けてぇ~・・・・
みたいな事になっています。
エンジンルーム内に7台分、バラされた部品が所狭しとヒシメキあっております。
ここんとこ、エンジン関係の仕事を集中的にやっており、ついこないだは、TC88のカムテンショナー交換してたり、今現在、78’FLHのオイルポンプ交換、その他諸々をしていたり、つい最近入ってきた車両はバルブの焼き付きでヘッド周りの修理をやらなきゃいけないし。
更に一台、カスタムベース車両のエンジンも今から開けてOH(オーバーホール)せねば・・・・
これだけオーバーホール待ちのエンジンがあると、旧車はそんなに壊れる物なのかと思われる方もいるでしょうが、ここにあるのは全てアメリカや他店で組まれたりした物です。
ちなみに、ここ10年私がOHしたエンジンでやり直したのは、安物社外シリンダーが割れてしまったナックルと、半年で3万キロ走る超人的なエボの2台だけです。
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相変わらず、現在作業中と待たせている車両が50台越えで、大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
引き続き作業助手も募集していますので宜しくお願いします。

72’SHOVEL エンジン part③

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①エンジンの要、良いエンジンを組むにはクランク周りをキチっと組む事がキモなのです。あとオイルコントロールも大事ですが。
今回は純正よりも遥かに軽量なピストンを使う為に、以前に組んだ人が空けまくった穴を埋めていきます。ただ単に埋めるのではなく、最適なバランスになる様に考えて一つ一つ重量を決めて削り出した部材です。
ちなみに、通常のバランス取りでは開ける場合の方が多いです。
②こんな感じで油圧プレスで圧入して埋め込みます。この後、さらに抜けないように固定します。
クランクのバランス一つで、耐久性やエンジンのフィーリング、振動の出方が変わるのでこれはヒジョーに重要な事なのです。
ハーレーのエンジンをやっていて、特に奥が深く、研究し甲斐のある部分の一つです。バランス取りの作業の画像は割愛しています。
ちなみにこの電子秤(はかり)は10万以上します。こんな高級品必要無いのですが、やっちゃいました。しばらく灯油を買うお金もありませんでした。ホントにアホですね↓↓
ハーレーのエンジンは数字がすべてでは無いのです。でも、基準を作る為のデータは欲しいものなんです。
その後、1/100mm以内に芯だしを行います。これもマニュアル通りでは、話になりまセニョリータなので、独自の方法でやっております。
③今回使った、KB製ピストン。他のピストンより200グラム程違う事もあるくらい軽いんです。
軽いので、サイドフォース(横にかかる応力)が軽減され、シリンダーにやさすぃー感じになります。
簡単にいうと、シリンダーの壁を鉄球で叩くのと、ピンポン球で叩くのとでは・・・・・そこまでの差はありませんね、言い過ぎました。でもなんとなくイメージ出来るでしょうか。
④このエンジンで目指したのは、耐久性が高く、ストレス無く気持ちよく回せるエンジン。特にチューンupしていないですが、うまくオイシイところを使って走れば早く走れるシブ好みなエンジンに仕上がったと思います。
闇雲に排気量を上げたり、レーシングパーツを使っても全てがバランスよく、きちんと組まれてなければ実力は半減します。

72’SHOVEL エンジン part②

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①今回、もともと付いていたオイルポンプがヒジョーに怪しい状態だった為、オーナーのリクエストでS&Sのオイルポンプに換えました。
これがまたポン付けとはいかず(ボルト穴とかは合っているので取り付けだけならそのまま取り付けれますが・・・・)このように新たにオイル穴を開けたり、要らない穴を塞いだりしなければなりません。
クランクケースのこの付近の穴という穴が何処にどう通じているかを各年式で全て理解しておかなければ、とんでもない事になる事もあります。
たま~にですが、ごちゃ混ぜのエンジンとかではこの辺が間違って組まれている事もあるので、車体番号で見た年式通りに部品を付けてもエンジンがぶっ壊れる事もあります。ハーレーのエンジンの恐ろしい一面を紹介いたしました。
②こっちも・・・・ドリドリ
この車両はオープンベルトなので空けなくてもいい所もあるのですが、将来クローズドに戻した人が困惑しないように開けときましょう。写真には有りませんが、ブリーザーギアも加工します。
③カムカバー各種(4種類)
クランクケース側のオイル通路とマッチングしたカムカバーを使わないとエンジンが焼きつく恐れがあります。カムカバーガスケット1枚間違えただけで同様の事が起こることも有ります。
気を利かして新品のブッシュに入れ替えても、オイル穴が開いてない物もあるのでこれまた要注意ですよ。信じちゃいけないアメリカ製品。
④んで、こんな感じで付きました。ここから更にドライブギアも強化してマルチグレードのオイルを使える様にします。

72’SHOVEL エンジン

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①一般の方にはあまり見受けないこの小さな部品。バルブ・キー(キーパー、コッター)というもので、バルブスプリングが外れない様にセットする為のクサビの様なものです。
このバルブ・キーですが、写真手前の黒い方がこの車両に付いていた物で、社外品(有名メーカー)の物です。奥の方が純正です。
パッと見は手前の社外品の方が加工精度も高くよさそうですが、このちょっとしたパーツの選択ひとつでエンジンの特性が変わってしまうので要注意です。
②まず純正のバルブ・キーをセットしたところ、セット長(スプリングの長さ)が34.35mmです。
③次に社外品のバルブ・キーをセットしたところ、セット長32.98mm。部品が肉厚な為、1.37mmスプリングが縮んだ状態で付きます。これにより理想のスプリングレート(バネの強さ)より硬い状態になってしまいます。バネが強すぎるとバルブガイド、ロッカーアーム、タペットローラー、カムベアリング他、多くの部品に対する負担が大きくなりエンジンの耐久性が落ちる可能性が出てきます。
しかも怖い事に、この社外品のパーツの部品番号に対応する純正品番が②の物と同じなので、何も知らずに互換性が有ると思いそのまま組んでしまう恐れがあるのです。
古いエンジンを組む時は、バラしてチェックして計測するのに非常に時間がかかります。悩んでるだけで半日過ぎる日もよくある事です。
たまに「俺は30分もあればエンジン全バラに出来るぜ」とか言うメカニックが居ますが、バラしている最中、いや、バラす前の段階からそのエンジンの悪い部分を見つけ出す為のヒントが沢山隠れているということを知らなければなりません。
④これはバルブスプリングのロワーカラーですが、国産トラック用のシールを入れる為に内径が広げてあります。1340用のヘッドならまだここまで広げてもいいですが、1200はバルブガイドのツバの部分にこのロワーカラーが乗っかるのでこれでは角当たりしてスプリングが斜めに付いていたので要交換です。
ちなみに上部のアッパーカラーは4個中3個が違う物が入っていました。よーく見ないと判らない程の違いでしたが・・・
最近、ネットや雑誌で得た受け売りの知識で組んだ様なエンジンをたまに見かけますが、その情報が自分のバイクに当てはまらない場合が多くあるので、やはり自分の目で見て考えていかなければ本当の技術は手に入れる事が出来ないと思います。
チューニングエンジン用のシリンダーを主に作っているアクステルの工場にTrust Nothing (何者も信じるな)と書いてあったと思うが、常識とされている事や、時に作業をしている自分自身ですら疑わなければ良い物は出来ないという事だと思う今日この頃です。